お勧めの本

 個人的にお勧めの本「泣いた」5冊
 
 佐藤ケイ『LAST KISS』
 数年前たまたま近所のブックオフで見つけたラノベ。それまで推理小説ばかり好きだったけど箸休めに読んでみたら号泣してしまった。Wikipediaより抜粋すると<いわゆる「病弱物」と呼ばれるジャンルの王道ど真ん中をそのまま描ききったこの作品は、それまでの「メタ萌え」的作品に慣れた読者の間に戸惑いをもたらす一方、作者のハートフルな側面を支持していた読者からは大きな支持を得た>らしい。『天国に涙はいらない』とか『私立!三十三間堂学院』シリーズのほうが有名だけど、どんなもんか?試金石的に手にしてみるのもいいかも・・・

 
 舞城王太郎『世界は密室でできている』
 第19回メフィスト賞作『煙か土か食い物』とか第16回三島由紀夫賞受賞作『阿修羅ガール』が代表作だけど舞城ファンとしては押さえておきたい一品。Wikipediaでは<第131回において、石原慎太郎は「タイトルを見ただけでうんざりした」と評し、また三島由紀夫賞の選考では、宮本輝が「面白くもなんともないただのこけおどしと評した>らしいけど無問題!むしろキライな人のキライなものは大好きの法則を適用したい!

  
 乙一氏の作風といえば<残酷さや凄惨さを基調としたものと、切なさや繊細さを基調としたものの、2つの傾向が存在している>とWikipediaで表記されているけど、ここでは後者の切なさパートを集めた短編『さみしさの周波数』を取り上げたい。2007年6月16日公開した『きみにしか聞こえない』やコミカライズ&ドラマ化した失踪HOLIDAYなど知名度は若干落ちるものの、ちょっと読んでしんみりするには申し分ない

 
 浦賀和宏『記憶の果て』
 第5回メフィスト賞を取ったデビュー作であり安藤直樹シリーズの出発点でもある。ミステリ+SF要素に留まらない青春エンタと言ってはテンプレ紹介文だけど、学生時代の甘酸っぱい孤独感を満喫するにはイチオシ。著者は当時19歳ということもあって青春時代の光と闇がダイレクトに伝わってくる。いろいろ美味しいところを裏切ってもらえることも請け合い!

 
 周防ツカサインサイド・ワールド』
 2005年3月に第5回電撃hp短編小説賞(大賞)を受賞したわりに、あまり脚光を浴びていないのが不思議である。友達以上恋人未満の処方箋にどうぞ。入間人間電波女と青春男』でもロケットを扱った青春パートがあったが、こっちのほうが既出であり奇抜。ただの短編だと侮っているとうっかり足を掬われるだろう(笑)


 個人的にお勧めの本「ミステリ」5冊 

 
 黒田研二『ふたり探偵―寝台特急
 近年は『逆転裁判』『逆転検事』のコミカライズやノベライズの原作者としても定評がある。デビュー作の『ウェディング・ドレス』からして、相当エッジの利いた大胆不敵なトリックを使いこなしていたが、あえて王道より邪道を選んでみた。本書は範疇外の鉄道ミステリという無茶な発注にも拘らず、従来の黒田節を遺憾なく発揮してくれた探偵ものとして評価したい

 
 服部まゆみハムレット狂詩曲』
 デビュー作は1987年『時のアラベスク』で第7回横溝正史賞大賞を受賞。1998年に直木賞候補となった『この闇と光』も同様に大逆転ホームランを打ち上げる作風というか、とにかく図書館で偶然手にした1冊だったがラストの意外性は脱帽だった記憶・・・2007年8月16日(満58歳没)を偲びたい

 
 麻耶雄嵩『鴉』 
 2011年第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞ということで『隻眼の少女』が代表作になってしまったが、本書は1998年度の「本格ミステリベスト10」にて第1位に選ばれたもの。登場人物のトリッキィなネーミングセンスが光る。とにかく読了感がすごい。現代から江戸時代にでもタイムスリップしたような面白い世界観。とあるトリックのために構築された壮大な舞台装置が働いており圧巻の一言(笑)

 
 二郎遊真『マネーロード』
2008年に第39回メフィスト賞でデビューしてから2冊しかないけど埋もれるには惜しい。意表をつく冒頭の一人称(笑)から、表題のわりに銀行や証券業界のファイナンシャルな経済話には発展しないので入りやすかった。一枚のお札に込められたルーツの旅、ひきこもり主人公の圧倒的な財力でねじ伏せる爽快感。

 
 秋月涼介『消えた探偵』
 どっちに転ぶか危なっかしい一人称視点ながら着地点はけっこう綺麗に収まった感。ほとんど前半は登場人物の紹介だけで物語が遅々として進まなかった問題点はあるけど、所長や看護士たちをはじめ精神疾患者で構成されているのがキャラ重視の世界観は面白い。前向性健忘症のシルヴィアはefの千尋と同じ設定ながら扱いが妙味。統合失調症アリシア悪魔崇拝とのギャップが可愛さを増量。句読点が多すぎるのは、これが病んでる世界観を表わしているのか?ちょっと読みにくい感じもあったけど。物語としては若干減点ながらも、ミステリとしては満点。


 個人的にお勧めはしない本「でも超好き」5冊

 
 佐藤友哉エナメルを塗った魂の比重鏡稜子ときせかえ密室〜』は鏡家サーガの第2作目である。ユヤたんといえば、第20回三島由紀夫賞受賞作『1000の小説とバックベアード』とか第29回野間文芸新人賞候補『灰色のダイエットコカコーラ』とか、最近映画化した『デンデラ』など最近になってようやく有名作を排出しているけど、これもきっとメディアミックスも時間の問題だろう!

 
 白河三兎『プールの底に眠る』
 あえていえば容疑者イルカの回想で語られるセミ殺人事件の真相(ルーツ)の旅。一見、過去完了の罪や死からフィードバックする仄暗いホラーかと思えば、 ミステリ風味の青春エンタ。駅の掲示板、電話BOX、旧時代の貴重な財産をしっかり使ってる。 ゴミ屋敷の死体が程良い先入観となってスイカ割りを盛り上げる。一部でハルキ臭い(村上春樹)という意見もあったけど、ただその厭世観も「お爺様」や「底のライタ」などが担保してくれるはず。 辻村深月乙一を割ったような、しかしファンタジィではなく「死」の取り扱いも納得できる許容範囲!

 
 清涼院流水『ぶらんでぃっしゅ?』
 流水ファンとしてここで多くは語らない。ただ、「あとがき」にて著者息子の生後2ヶ月の日にバージョンを書き始め、ちょうど生後5ヶ月の日に脱稿したらしい。構想三年にして、事実上の制作期間は三ヶ月でここまでの完成度はやはり、著者らしい見事な出来栄えであると脱帽せざるを得ない。帯文にもあるように、森博嗣西尾維新飯野賢治氏たちのゲスト参戦=実名ギリギリの登場には、正直、羨ましいの一言に尽きたけどね。とくに森氏の「くしゃみ」案には惚れ惚れするとしか‥

 
 西尾維新クビシメロマンチスト
 言わずと知れた戯言シリーズ第2作目。本書と時系列的に『零崎人識の人間関係戯言遣いとの関係』が表裏一体となっており、さらに人間シリーズ完結編にも繋がっている。というか純粋に単品として感涙ものです。いーちゃんと玖渚友、そして大本命:葵井巫女子ちゃんが巻き起こすハイテンションな殺人事件と恋物語の結末がまたこれが・・・
  
 
 中井英夫『虚無への供物』
 竹本健治も入れて日本探偵小説史上「四大奇書」の中では一番お気に入り。異論は認める(笑)好き嫌いがはっきりわかれるアンチ・ミステリの代表選手だ。中井英夫はこれしか読んでないけど、その影響力が後の作家さんに影響を及ぼした片鱗は伝わってきた。本書は初版発行後、形を変えて四度出版されているが、塔晶夫の筆名は廃し、講談社文庫まで新版発行に際しては加筆訂正を行っている。「第八回江戸川乱歩賞」では第三次予選通過(ベスト四編)までいったらしい。ちなみに中井英夫大全集P480・7行目「藍みゃん」→「藍ちゃん」は誤植なのかな・・・



 ※ちなみに森博嗣はひとつに絞れなかった。本当は『四季』の四部作を挙げたいところだけどS&MやVシリーズを完走してからだろうし。恋恋蓮歩の演習とか捩れ屋敷の利鈍も好きだけど『すべF』を外すこともできないしGシリーズは未読のままだったりする